PROFECT STORY 01
あずきバーにつづくデザートを!
〜包みたてのおいしさ そのままフローズンシリーズ〜
〜包みたてのおいしさ そのままフローズンシリーズ〜
冷凍和菓子の再編にかける
プロジェクトメンバーの熱い想い
EPISODE.1:
井村屋グループが冷凍和菓子事業に乗り出したのは2008年頃。当時は、将来性を見込み、和菓子を冷凍で流通させようと発足した事業だった。ゆくゆくは井村屋グループの中核事業に発展させたいという想いはあったが、開発してきた消費者向け商品は思うように売れず、何年も大きな成果を出せていなかった。2020年、いよいよ本格的な冷凍菓子事業再編に向けてプロジェクトが再発足。集められたメンバーは計10名。プロジェクトリーダーには、2008年の冷凍和菓子事業立ち上げから商品開発に携わる者が着任した。
今回のメンバー編成の特徴は、比較的若い年次のメンバーが参入していること。なかでも流通に携わるセールス担当者はすべて若手から選出された。この背景としては、2008年に発足した商品をリニューアルするという考えではなく、売り方や販売促進も含めてゼロから商品開発をする為に、まったく新しい柔軟な発想を求められていたことが挙げられる。冷凍和菓子事業は、以前から経営層の期待値も高かった。これほど大規模なプロジェクトとして発足したことからも、井村屋グループにとって重要なウェイトを占めるものであることが窺える。
EPISODE.2:
まずは、これまで展開してきた冷凍和菓子についての分析と考察を行い、現状の課題の洗い出しを行うことから始めた。これまで、消費者向け商品の販売規模は小さく、業務用商品が冷凍和菓子事業の中心であった。当時、まだ冷凍食品売場に和菓子が販売されているという認知がほぼない状態だったが、冷凍和菓子という新たなジャンルを冷凍食品売場につくり、冷凍和菓子を浸透させたいという想いがメンバー全員に強くあった。消費者向けの商品開発に再挑戦することを決めてからは、考えられる課題を徹底的に洗い出した。プロジェクトメンバーの中には、開発、生産、営業企画、営業とあらゆる視点を持つ者が集結しているため、ミーティングは週に1度、または2週に1度のペースで行われ、それぞれの立場からの鋭い意見交換がなされた。
たとえば、生産側からは、コスト面の課題があがった。冷凍食品は、店頭において割引価格で販売される為、安価で買えるイメージがある。お客様に手に取っていただきやすい価格帯に設定するには、原価や生産コストもその価格に合わせる必要が出てくるが、生産設備も整っていなかったため、コスト面での課題が大きかった。一方で、営業の現場からは、実務的な問題も浮かび上がった。各営業担当が新商品の提案をする際に、提案書の内容など過去の事例を引用することが多いが、冷凍和菓子は販売実績も少ない中で新たな売場を切り開く為の情報も十分ではなく、そもそも売り方がわからない、といった生の声も上がってきた。そのような細かい課題も取り上げ、営業担当が引用しやすい提案書の雛形や商品パンフレットを作るなど、提案しやすい環境を整えることをも目指した。新しいものを生み出す際には、こういった一見商品とは直結しないような隠れた問題や課題も明るみになる。それを一つずつ潰していくことが、プロジェクト遂行において重要になると、メンバーは考えていた。
EPISODE.3:
各メンバーが多角的な視点で現状の課題を洗い出すと共に、冷凍和菓子は消費者のどのような課題を解決できるのか、市場を分析し、仮説を立てて議論を重ねることで、今回の冷凍和菓子のコンセプトの大枠が形作られてきた。ターゲットは「小学生の子どもを持つ母親」。さらに、年代、住んでいる場所、生活習慣や趣向など架空の消費者を設定しながら、コンセプトを固めていく。コンセプトは「土日に買い溜めして、週末(木金)でもおいしく食べられる生菓子」に決定。このようにターゲットやコンセプトをしっかり固めることで、商品の設計、パッケージ、販売促進の方針につなげていくことができる。ここまで、およそ4ヶ月の時を費やした。
EPISODE.4:
コンセプト決めと同時進行で、開発メンバーは、これまでの課題に立ち向かう為の試作を重ねていた。一番の課題は、いかに品質の保持とおいしさの両立を図るか、である。冷凍食品売場に和菓子を置くのは、品質面で難易度の高い挑戦であった。わかりやすく例を挙げると、炊き上がったご飯を冷蔵庫で保管すると、カチカチのボソボソになる。この「老化」という現象が冷凍和菓子でも起きてしまうのだ。これは、2008年に冷凍和菓子事業が発足したときも課題として挙がっており、井村屋グループだけでなく、多くの類似品を生産するメーカーの課題にもなっている。
理想は「作りたて、包みたて」のおいしさ。井村屋グループの開発メンバーが、悪戦苦闘しながらひたすらに試作品作りを重ねていく中で、ついに冷凍でも「和菓子屋さんが毎日作りたてを提供している」ような包みたての餅のおいしさを実現することができた。冷凍下で、もちもち食感を保持させることに限ると、添加物に頼ったり、砂糖を大量に使うことで容易に実現できる。しかし、井村屋グループではその方法は使えない。素材本来の美味しさや安全・安心を同時に実現しなければならないからである。その為に、原料や配合を変えながら実に60パターン以上の試作品を積み重ねて、絶妙なバランスの配合に成功し、理想とする味、食感、品質の冷凍和菓子を完成させたのだ。これは今までの冷凍和菓子事業での成功と失敗の経験があってこその実現でもある。理想的な商品の開発にかかった年数は、2008年の事業立ち上げから約10年以上かかったことになる。
EPISODE.5:
試行錯誤のうえ、ようやく商品の基盤ができあがった。次にPJプロジェクトチームは、同時進行で進めていたパッケージデザインの佳境に入った。今回の冷凍和菓子の改良において、いかに売り場で手に取ってもらえるかが、大きな課題としてあった。なぜなら、和菓子は一般的には60~70代の方が多く購入している。ただ、今回狙うのは、冷凍食品売り場のメインターゲットでもある、30~40代の主婦層。ターゲットの目に留まりやすく、手に取りやすいデザインを考える必要があった。
冷凍食品売り場は競争が激しい。本来は和菓子のデザインは、シンプルで落ち着いたものが多いが、冷凍食品の売り場では、落ち着いたデザインは目立たず、新参者であればなおさら見落とされてしまうのだ。今回はターゲットに合わせて、「おいしそう!食べみたい!」と思われるようなインパクトを重視して、デザインが作られた。キラキラした色使いは、色違いの商品を2品3品並べるとさらに見栄えがし、冷凍食品売り場でも十分目に留まる。和菓子の写真と「包みたてのおいしさ そのままフローズン」というキャッチコピーを載せた大胆なデザインは、これまでの和菓子のイメージからかけ離れた新しさがある。主婦層が手軽に買い置きとして使いやすい4個入り。中のトレイは和菓子の雰囲気に合わせながら、お皿としてもそのまま使用できるというこだわりようだ。こうして、井村屋グループの技術と知見で作られた新たな冷凍和菓子が完成した。
Finally
このプロジェクトで開発された新たな冷凍和菓子は、食品流通の大手企業が主催するコンテストでグランプリを受賞した。冷凍食品とは思えない味と食感のクオリティ、またパッケージデザインが高く評価されたのだ。初めて食べた時は、その和菓子本来のおいしさに、感動する。
「井村屋グループに勤めて約10年。開発に携わってきて、やはりモノをイチから生み出すことに大きなやりがいを感じます。企画立案から最終的に工場での生産に落とし込み、生産から流通に関わるところまで幅広く、長期にわたって一つの商品に携われることは当社の強みです。まだまだ自宅で冷凍和菓子を食べる習慣が広まっている状態ではありません。しかし、食文化を変えるくらい大きな可能性があると考えています。冷凍和菓子を食べる習慣が深く皆さんの日常に根付き、長く愛してもらえるような商品作りを今後もしていきたいと思います」開発担当者は、力を込めて、こう話した。
井村屋グループが手掛ける革新的な冷凍和菓子がどのように広がり、進化していくのか。今後も目が離せない。
Member:
・プロジェクトリーダー
・生産:2名
⇒市場適正売価を目標とした生産ラインの見直し
・営業:4名
⇒営業視点からの課題の洗い出し、新規企画立案(販売・スペック等)
・商品営業企画:1名
⇒企画や販売促進から課題の洗い出し、新規企画立案(販売・スペック等)
・開発:2名
⇒味、品質面、パッケージなど含めた総合的な企画課題の洗い出し、
新規企画立案(販売・スペック等)